京町家の色──西陣梨木町─ギャラリー「京うさぎ」冷水隆治(再生研幹事)
藍染に染めた暖簾をくぐるとカタカタと「さおり織り」の織機の音が 聞こえてくるような空気を感じる 土壁と柱 永い歴史を刻んだ土壁 柱はその歴史を支えているように光っている ふと、ヒマラヤの山麓ネパールのキルティプールの 日干し煉瓦の町家の風景が脳裏をよこぎった 雄大な山の麓には人々の永い歴史を受け止め、 脈々と生活の時間が流れている 人々はヒンズー教と共に生活が始まり 人々の日常は静かで豊かな時間を共有している 中国とインドの間に位置する地には 常に権力との闘いであった 丁度、京都の町家が権力の入れ替わりの 間で生き延びてきたように、、、、、 キルティプールは絨毯の生産地であり ニューヨークのデザイナーの柄を織りこんでいる オーナーの織る「さおり織り」の感性は正に、 この町家に色を創るかのように生きづこうとしている 京町家にはいろんな想いが詰まっている 母親の温もりのような 父親の厳しい躾のような 自然の中の空気を感じる
前面道路からのアプローチは店の間、だいどこ、とおり庭と昔のイメージがしっかりと残る空気感をもっていた。 どの部分を再生、補修したのかしばらく気がつかない。 幼い頃過ごした時の家の臭いのような空気感で私を満たしてくれる。人間が生き続けながら、その時の出来事が皺のように体に刻まれるかのように……。 刻まれた皺は生き延びるエネルギーとなり栄養素の様になる。「京うさぎ」のオーナーは刻まれた皺の町家の栄養素を再びもとに戻すことの選択をされた。 まるで、湯をかけたこうや豆腐の様に、自らを町家の中に共存する事をされた。 ■町家との共鳴 しばらくあと数年をかけて、オーナーはこの町家と向き合い新しいスタイルを町家と共に創り上げていくのであろう。丁度、画家がキャンバスに絵の具を着していくと、ある日突然キャンバスは人格を持つようになる。 その後描かれたキャンバスは画家のもとから離れていく時が訪れる。ギャラリー「京うさぎ」は逆に、正に住まい手と町家の人格が共鳴しようとしている始まりなのかもしれない。 これから永い時間をかけて共に寄り添って創り上げていくものの空気を創ろうとされた。訪れるお客さまにとって多彩なイメージが湧き、町家とオーナーの作品との共鳴の出会いを想像致します。 ■京町家の色 設計という行為はその家をどのようにするかという思想に裏付けされなければならない。ここ「京うさぎ」は再生研・作事組が長年取り組んできた活動がしっかりしたのもであるということを感じさせる作品である。 明治の頃に建てられたこの町家は上京区の西陣のエリアで糸屋町に面している。この町家もかつて糸の販売を行っていた。店の間には糸を吊す竿をかける設えがあり、表の格子の部屋内には雨戸が組み込まれている。 水周りや土台など目に見えない箇所での丁寧な修復は町家再生を確実なものとしている。 再生は建物だけではなく、小鳥が木々の実を食べにきたり、昆虫が庭に飛来したりするこの「京うさぎ」は都市の中で暮らす事の再生なのかもしれません。 自然と共に暮らす京町家再生は私共にとりとても必要な事だと改めて感じとりました。 ■京町家の再生活動 オーナーは透かしの藍染めの暖簾を掛けられた。 藍色は日本の風土に育った素朴な自然の顔料です。 又、藍色は他の顔料との混ぜ合わせを拒否します。 自己完結する顔料として、絵を描く者にはとても難しい色彩です。一方、自己を完結する色彩は他の色を引き出させてくれます。 京町家で構成される建築材料は丁度、藍色の暖簾のようであると気がつきまました。土壁、柱、畳、障子、襖の自然の材料での町家には友禅や西陣織りなど鮮やかな着物が映え、日本画や生け花の飾りを引き出させてくれます。 同時に、人々の豊かな感性をふくらませてくれます。 人々が永く豊かに生き続ける事の要素の一つに自然との向き合いがあります。千年以上も住み続けるには町家の中の自然との向き会いが欠かせません。 少しの設えで大自然をイメージする事が出来る町家の色はとても大切な要素です。人が生き延びるために欠かせないのもになっています。 2012.1.1 |