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京町家再生研究会

日本料理と京町家──中京区・旬彩寿司 はるぜん

内田康博(再生研幹事)

入口

2階ツシ
1階オクノマ
 釜座通りを二条通りから少し南に下がったところ、「旬彩寿司 はるぜん」さんをお訪ねし店主で料理人の林さんからお話をお聞きしました。
 建物についてお訪ねすると、築不詳ですが、2階の高さが低い「つし」となっていることなどから明治の中頃の建物ではないかとのこと。外観は虫籠窓が一部引違い窓とされている以外はほぼ元のまま維持されています。2年半ほど前、林さんがこちらをお借りし、料理屋として改装されましたが、もとのまま維持されてきた間取りをそのまま活かして使われています。ただし、柱の根本が腐っていたり、壁が傷んでいたため、根継ぎや揚げ前などの構造改修を行い、屋根は元の瓦を残して一部補修に留めました。調理スペースとしてハシリニワに厨房機器を設置し、ミセからダイドコにかけて大きなカウンターを設置したのが大きな変更点で、それ以外は現況を活かして客席、事務スペースとしています。1階オクノマは土壁を塗り直し、前栽が望める落ち着いた部屋となっています。縁側にはアルミサッシが建ててあったのでそのままとしていますが、トイレへと向かう渡り廊下は外部のままです。お客さんは心配されたほど抵抗がないようで、庭を直接ながめられるのが好評とのこと。2階のツシは低い天井のまま客室としていますが、こちらも使いにくさよりも空間のおもしろさが受け入れられているようです。
 御料理はお寿司を中心とした日本料理で、しっかりとした出汁で食材の味を引き出し、素材を活かした素朴な味を心がけているとのこと。寿司はとにかくおいしいご飯を大切にされ、粘り気がすくなく寿司にあう農家直送の近江米を使われています。また、あわせ酢も自家製で、時間をかけて寝かせることで味わいを深めているそうです。
 京都でご自分のお店を持つにあたり、町家以外は考えておられなかったとのこと。料理を楽しむには空間の雰囲気も同時に味わっていただく必要があり、建物も含めておもてなしと考えているとお話しいただきました。木と土を主とする自然の素材を最大限に生かす日本の伝統建築は、林さんの料理に対する姿勢と通じていると感じられました。
 お客さんの反応はとお訪ねすると、家に帰ってきたように落ち着く、ほっこりする、心がなごむ、とよくいわれるそうです。土の味わい、木の味わい、そして御料理が総合されて、そのように感じられるのだと思いますが、まさに林さんのねらい通りとなっているようです。今後についてお訪ねすると、ゆくゆくは新たな店舗のことも考えてはいるけれども、いまのところは気に入っているこのお店でじっくりとやっていきたいとのことでした。
 次回は是非、空間だけでなく、食事も体験してみたいと思います。

 はるぜん
 営業時間 11:30〜14:00(予約のみ)
      18:00〜23:00(日祝 〜22:00まで)
 不定休  予約・問合せ tel. 075-241-9034
 京都市中京区釜座町二条下ル上松屋町690-2

2011.3.1