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京町家友の会
「楽町楽家2013」を終えて

 今年も無事に楽町楽家2013が盛況に終了いたしました。ご参加ご協力頂いた皆様、8回目まで支えて来てくださった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。最終日のクロストークで頂いた貴重な意見も踏まえて、今年の楽町楽家を振り返りたいと思います。


宮本町-格子を外して通りと繋がる
 昨年度の多くの友の会会員さんにご協力頂いた催しから、本年度は開催会場数を一気に減らすことになり、戸惑われた参加者さんも多かった様に思います。楽町楽家を開催するにあたって、「町家」を取り巻く状況は常に変化しており、毎年芯は変えずとも、頭を悩ませながら方針を決めています。

 楽町楽家の第1回目は、まずは町家を知ってもらい、中に入ってもらうこと、コンサートや展示会など、町家の空間を様々な形で感じてもらう事から始まりました。そのうちに町家の活用がブームとなり、会場数やイベント数は増え続け、楽町楽家らしい賑やかなイベントになっていきました。しかし、その中で町家の店舗や事業所が増え、町家で催しをする事は、楽町楽家でなくとも日常に行われるようになりました。(「京町家通信vol. 82」2012年5月1日発行号参照)

 私達が楽町楽家の運営に関わらせていただいてからは、「住まいとしての町家」という原点に戻り、オープンハウスを主体に企画をさせて頂きました。住まい手と訪問者の交流は、一見地味だけれども他には無いインパクトをもったイベントとなりました。しかしそれは、店舗ではない一般のお宅をご好意で開放していただくという点で、プライバシー上、防犯上、住所や地図の掲載上で非常に難しく、今年度開催に向けてなかなか議論の答えを出す事が出来ませんでした。数が増えていくと、運営側が把握しきれなくなり不慮の事故を招く恐れもありました。また、会場数が多いことで運営側が段取りに追われ、当日起こったことを共有できないフラストレーションを感じていたこともあります。


路地町家 有-茶室の様子(安田泰幸・画)
 そこで、今年度は思い切って会場数を減らし、より細やかにイベントを企画できるよう心がける事にしました。少ない分多様性があるようにと、いくつかのタイプの町家に絞って声を掛けさせていただきました。


加藤家-井戸水で冷やした
蕎麦茶を一服
 今年の楽町楽家では、会期前にSDCの教室をお借りして、参加者・協力者・スタッフ交えて全体の顔合わせ説明会をしました。これにより催しの全体像の共有ができ、会期中も顔が分かり、催し全体の一体感がありました。そのせいか、例年よりもSDCの学生達が準備から当日まで積極的に参加してくれ、色々な話をする機会を持つ事が出来ました。彼ら若い世代の感覚で感じる町家には、これからの町家が生き残って行くためのヒントが隠されていると思います。


土間ハウス-風通しのよい離れでお茶を
 オープンハウスでは、会場が少ない分、急いで回る事が無く、訪れる側も迎える側ものんびりとお茶を楽しみながら時を過ごし、お話をする事が出来ました。各家が趣向を凝らし、客人を迎えることで日常から非日常に変わる町家の空間を楽しんでいただけたようにも思います。また、住まい手と訪問者だけでなく、地域の方々を巻き込んだ新しい楽町楽家のかたちを見る事が出来ました。

 作事組の「職人さんのお話」や情報センターの「住みたい町家を探しに行こう」には、関心を持った若い方が多数集まり、町家の維持管理や実際に住むことに関しての身近で具体的な相談場所としての役割が求められている事を感じました。


釜座町町家-職人さんのお話

 最後に、楽町楽家は広告写真や資料館のような町家ではなく、実際にお住まいの生きた町家を感じる事が出来る稀有なイベントです。これまで8回にもわたって開催出来たことは、京都の町家の住まい手さんのご協力と、今までのつながりの蓄積の結果であり、日本の社会に対しても大きなメッセージになっている事と思います。会期中に行われた友の会総会にて、新しい友の会の体制が整ったとの事、心強く思います。今一度、ずっと楽町楽家を支えて来てくださった皆様の手によって、持続可能な「楽町楽家」が作られていく事を望みます。