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京町家情報センター
薬屋さんだった京町家にお住まいのF様御夫婦

聞き手:若山不動産 若山正治 

 今回は大宮姉小路に古くからあり、以前お薬屋さんをされておりました由緒ある京町家。100年以上の建物。大黒柱を修繕する際に、棟上げされた時の記録があり、建築された時のことが書かれていたそうです。ご主人は8代目となり家督を継がれてまいりました。今回は奥様がお嫁に来られた時の感想・様子から、現在に至るお住まいについてお伺いしてまいりました。

●こちらの建物で生活し始めた時の印象は(奥様)
 以前住んでいた家も町家として似たような感じの家だったので、特にその当時、違和感はありませんでした。土間があって、離れがあって、裏庭があってという環境。親との同居ということに関しても今少ないかもしれませんが、自然な形で3世代で生活をしておりました。子供を妊娠した時に、土間から上がる際、敷居が高いことは大変だなと感じました。こちらの家はガスでしたので、今では当たり前ですが、便利だと感じたのを覚えています。「日本家屋の良さ、そして庭があり広く感じ気持ちがいい」と今でも感じています。

●建物の良さを教えてください。
 ご主人:一番は木のぬくもりのあることです。そして和風の建物そのものが心を落ち着けます。庭があって、朝水やりできたり、建物の中のしつらえを変えたりして、季節に応じて毎日の生活を楽しめることは、小さい頃は当たり前と思っておりましたが、とても贅沢なことだと思っております。
 奥様: 生活スタイルの変化により建物を修繕していくことができることだと思います。バリアフリーにすることにより生活も楽になりました。不便な中でも工夫できるところですね。

●2002 年の大幅な改修について
 父が亡くなった後、建物の大幅な改修を行いました。薬屋をしておりました様態を変えて住居のみのスタイルに変わったこともあり、大工さんに大幅に見てもらい改修を行いました。さすがに耐震のこともあり梁を替え、シロアリの対策も行いました。お風呂、台所などの水回りも改修しました。おくどさん、井戸もありましたが、生活しやすい形へ改修いたしました。

●地域とのつながりについて
 この町内は横の連携がよく仲良くさせてもらっています。お千度、地蔵盆、体育祭、そして今は敬老会・防災訓練など子供は少ないながらも色々と活動しています。
※お千度:この地域では八坂神社に5月に町内でお参りに行くこと。

●近隣の様子をみて
 保守的な街ではありますが、ドーナツ化現象をうけて住民は少なく、老人所帯も増えています。 色々活用してほしいと思っていますが、若い人が住み続けるのは難しいという一面も理解しています。町家を活かしてお店などは増えていますが、住むところとしてはマンションを見ながら難しいのかと少し感じています。

●これからについて
 不便なところで生活している中での工夫をすることが当たり前の日常。町家に住み続けることが日常と思われて日々感謝して生活しています。必要とするライフスタイルを考えて、建物を形式はどうであろうとできるだけ残していきたい。そして自分たちも残っていきたいです。
 今は息子とも一緒に住んでいて、色々これからのことも考えております。息子の友人等からすると、この家は広すぎてビックリされることも多いと聞いています。自分が築いてきたものもありますが、縛られない、良い生き方をしてほしいと思っております。
 通る人が建物を見上げてくれて、看板の跡を見てほっとしてくれる様子。建物中をガラス戸で覗き込めて、母が近くの住民のみなさんと楽しくいた空間。残していければいいと思っております。

< 京町家情報センター事務局 城幸央 >

2018.9.1