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京町家情報センター
中村絵里、マーク・シュヴェイマ邸

聞き手:岩本 純一(丸吉住宅)

--マークさんはアメリカ、絵里さんは横浜ご出身ですね。京都を住まいに選ばれた理由は?
 M:日本に就労した際にたまたま配属されたのが京都でした。
 E:私は横浜出身で、社会人1年目まで東京・横浜で生活していました。大学時代から、京の地に住むのが夢でした。自転車で町中どこへでも行けるちょうどよい規模と商店街や個人経営の店での文化形成と独特の四季折々の催事に興味があり、転職をきっかけに京都配属を希望し、晴れて京都に移り住みました。かれこれ今年の春で9年になります。

--京町家を住まいに選ばれた理由。
 M:アパートより家賃に対する空間価値が高い。空間が広い。アパートは無機質で、四角い空間。悲しい空気が流れている。
 E:私が育った家はマンションで、一軒家に住んだことはありませんでした。京都でも最初はアパートでした。京都のアパートは学生向きが多く、設備があまり良くありません。電気コンロ、1口コンロであったり。ユニットバス!現代の人は慣れているのでしょうか?お風呂場はプラスチックですか?そんな浴室で1日の疲れがとれるわけがない。お風呂はタイル張りですよ。と、結局新たな生活を大人2人が心地よく始めようと思って町家を選びました。マンションは、窒息しそうになります。それに比べ町家の飾る要素には、木があります。梁や壁の中の柱。この自然な要素が目に入ります。それだけで安心します。京都の古いものを活かすというアイデアが好きだからです。現代の「インスタント(即席)で便利で快適」なものが優れているという世の中の物差しから町家をみれば優良住まいではなく、古いがゆえにがたがきていて「扱いにくくて生活に余分な手間がかかる」と考える人もいるでしょう。現代の価値観に合わないものをすべて削除すると、文化が残らないと私は考えています。受け継いだり、活かすという営みがとても大切なことだと思います。

--住みごこちにおいて、良い点と悪い点を教えて下さい。
 M:間口が狭く、低いので186pの私にはなれるのに苦労した。いつも頭をぶつけていました。畳にはダニがでるのでフローリングの方が好きです。サンフランシスコでヴィクトリア様式の家に住んでいたことがありますが、ヴィクトリアハウスよりもコンパクトで隙間風が少なくていいです。
 E:夏にエアコンを入れなくてよい環境は最高に心地よいです。温度差が室内外でそれほどないので、体への負担が少なく夏バテしにくい。窓を開ければ風通しが良く快適です。冬になると光の入りが乏しくて、暗く感じることがあります。
 
--マークさんは、アメリカから来られました。外国人も町家に多くお住まいされていますが、これから京町家に住まわれる外国人へのアドバイスをお願いします。
 M:背の高い外国の人は、最初の6ケ月、自転車用のヘルメットを着用することをお勧めします。(笑)そんなに多くを見て決めたのではないですが、自分の好みをしっかり仲介業者に伝える。妥協せずに自分の好みを伝え続けること。

--ヨガ教室(お仕事先)も、町家ですね。ヨガと町家でつながるところがありますか?
 M:町家はおしゃれでかっこいい、渋い!日本のスタジオは、天井が低く、閉鎖的で、悲しい気持ちになるような空間がばかりでした。私が提供しているヨガは、ひとりひとりの中にある神聖な空間を大切にすることです。それを反映する空間が必要でした。ヨガスタジオとしてふさわしく寺院の中に入るような神聖な空間を創りだすことが求められます。素材は木、空気の流れがあって、自然光がふんだんに入り込む空間です。町家は改装の余地が相当の可能性を秘めています。私が借りたスタジオは10年以上無人で、屋根、床も抜け朽廃がひどく、駐車場になる寸前でした。

 今回、危機にある町家を残すことに微力ですが貢献できたことも幸運におもっています。
 
2017.5.1