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京町家情報センター
木村邸

 二条城から東へ300m、二条通の老舗和菓子屋さんから程近くの路地の中。
 大正初期の小さい町家が数件向き合い、その路地には元市電の敷石が並ぶ、まるで映画のシーンにも出てきそうな、落ち着いた風情を感じる路地です。
 若い二人がここでの生活を通し、結婚を決め、また新しいスタートを始めようとしていられます。
聞き手:若山正治 (若山不動産)

--住まれるきっかけ等
 3年前までは、近くのマンションに住んでいたのですが、狭いと思っていたこともあり、住みにくいと思っておりました。お隣との関係もあまりありませんでした。近隣で住めればと思っていたところ、この町家にたまたま出会いました。実は家内は不動産業に勤務していた為、家に関しては色々と知識や経験はあっただけに、先入観とは反対に、住んでみるとこの家はとても意外性のあるお家でした。
 この路地に昔の友人が住んでいたこともあり、より親近感を感じ、懐かしい路地の雰囲気と、町家の魅力に興味をもちました。

--実際に住んでみての感想はどうでしたか。
 町家に住むということに関しては、私は東山に住んでおり、子供ころからの経験がありました。家内は倉敷出身で、京町家には縁がなかったのです。
 建物は、しっかりリフォームされており、トイレもお部屋も、階段も思ったよりもよかったです。2階の部屋は、建物の傾きで、ビー玉が転がります。気になりましたが、家の歴史を肌で感じます。
 一番驚いたのは、「隣の声が聞こえること」。はじめは随分気になりました。よく考えると、こちらの音も向こう側に聞こえていることがわかり、お互いマナーが必要だと言うことが身にしみて分かりました。あとは、”ねずみの大運動会”ですかね。家内はまだ苦手です。

--地域との関係
 住んで2年目に町内の組長の当番があたり引受させていただきました。町内の活動に積極的に楽しくお手伝いができ、とても良い経験になりました。みなさんと仲良くなりながら、気持ちのいいコミュニティー作りの一部になれたと思っています。
 路地の中の皆さんとの普段の「いってらっしゃい、おかえりなさい」の挨拶など、当たり前のようですが、お互いが心地のよいものです。
 一番の思い出は、地蔵盆です。町内の皆さんで準備、本番そしてあしあらいまで楽しんで取り組めました。地蔵盆の朝には、鐘をならして町内を歩いて回るんですよ。知らない町内の方とも自然と話す機会があり、良い地蔵盆を作り上げられることができました。お隣の大家さんとはとても関係が良くて、家に遊びに行かせていただくこともありました。
 近所には若い人が多く住んでいられ、私たちが住んでからも、新しく入居される方、開業される方もおられ、とてもいい環境と思っております。
 
--町家に住んで伝えたいこと
 「町家とは建物のことばかり目がいきがちです。それだけでなく、社会と共存する姿勢がないと、町家での生活は楽しめない」とまさに、気配りの大切さの実体験から力説したいです。

--これからについて
 来年春には実はこの家を離れる予定をしております。とても寂しい気がしています。正直なところ、住み心地は良いのですが、家族が増えるとやはり狭いと感じております。現在、良い経験をしている中で、将来に向けていろいろと準備をしているところです。

 木村様 インタビューに答えていただいてありがとうございました。

 実はこの町家は、幸せを運んでくる“縁”があるお家のようで、ライフスタイルに応じて皆さん円満に次のステップへ向けて卒業されていくお家です。今回で4組目の新しいご家族。毎回幸せをあやからせていただき、感謝しております。


2016.11.1