聞き手:株式会社八清 西村孝平
――京町家に住まわれるきっかけは何ですか? 突き動かされるままに、鬼籍に至る約10余年の道中風景をビュフテイフルなものに、読書、歴史、日本の四季彩々が好きな私。一昨年11月、京都へ。数社に手紙を。我がまほろばは奈良にあらず、東山36峰静かに眠る京都です、と。早速某社長に紹介され夕方に見る、玄関の佇まいにビビびーん!。座敷に上がらず電灯も点けず、ここでOK。暗闇の土間で決めた私に案内担当者がビックリ。仲介業者を信用していたし、直感優先、自分で直せる自信もあり、即物件、即案内、即成約、123テンポよく京町家に到達。 ――住みこごちはいかがでしょうか? 火袋の「嫁隠し」に象徴されるように。京町家の建具は「視」線を遮るもの、風冷気を遮断するものにあらずを痛感。玄関の扉、玄関土間と火袋の仕切戸、風呂場前の戸も吊下げ引き戸、隙間だらけ冷気往来自由。 柱と土壁の隙間(外気が入る)1階の各床板の隙間(坪庭〜玄関まで床下通々冷気押入や畳の隙間から居間へ)寒期は屋外温度と家屋内温度は同じ、仰天吐息あー!。心魂情緒的理知的には居心地は最高、生理的体感的住み心地は適には超ほど遠く。 ――暮らしぶり(容認と居住の心象風景) ファンド借入金では最小限の改修だろう。よし快適に向けて知恵と工夫フル回転。発砲ポリロットで床等の隙間を埋める、壁と柱の隙間はシリコンコーキングで埋める、玄関扉と土間戸に冷気遮蔽の工夫、坪庭縁側下と玄関間縁の下にビニール布で遮蔽カーテンを設置(4月〜11月まで巻上方式通風涼しく)2階じゅらく?和室ハゲ壁はビル等の塗装工事現場用の飛散防止用ネット(白半透明)でなげしから畳まで張り下げる、ハゲ具合おぼろ風雅の景色となる。2階への暗い階段積年漆黒を米のとぎ汁でタワシがけ侘び寂び薄こげ茶へ、坪庭縁側とトイレに網戸新調、夏を涼しく、永年荒れ放題坪庭をミニ石庭風に造園蘇生させる。他改修善少々多々。京町家に住む心得は「ロマンと足らざるを自ら補う」京町家保存継承の主体者は家主のみにあらず、「心得」をわきまえた居住者である、自負をもって今は冬期,夏期屋内温度もそれなりに日々快適に暮らしております。「おとこが男であった時代、女がおんなであった時代、ひめごとが秘め事であった時代」凛々しく、たおやかに、ゆかしく、「貧しくとも高貴に生きていた」かの時代、かの人々のいぶきが京町家には宿る。瞑目馳せる思いよ花いちもんめ、京町家よ永遠なれ! ――京町家暮らしの良い点、悪い点は? 器用貧乏の腕がフルに発揮できて満足。日本人としての立ち位置、心のポジションが今さらながら定まる。床、畳ぶかぶかの2階、家族、人、住まうことちと難儀。綺麗に言えば、艶かにたわむ鴬張り、下の居間からするとドンゴロス製のトランポリン天井。 2014.5.1
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