• 京町家net ホーム
  • サイトマップ
  • アクセス・お問い合わせ
京町家情報センター
京町家に移り住んで──松本邸


 また今回も町家に移り住んだ方の生の声をお届けいたします。
インタビュー・聞き手:吉田光一
(株式会社フラットエージェンシー)

――町家に住むきっかけは何だったんでしょうか。
 合成材やプラスチック、ビニルクロスなどの劣化はただ単に見苦しいものですが、本物の木や土壁は少々傷が入ってもそれが絵になる上、年月が経つ程に味わいが出て来ます。そういう環境に住みたかったのが一つ。また、骨董品や古着、一昔前の映画や音楽などなど、レトロ好きが高じて家もそうしてしまったところもあります。プラモデルみたいな建売り住宅は始めから興味がありませんでした。かといって純和風の新築を拵えてもらう程予算はありません。そこに古町家のリフォームという選択肢を知り、一気に問題が解決したように理想と現実が合致しました。

――実際の住み心地や生活の変化はいかがですか。
 自分達のライフスタイルを意識した上で、設計段階から何度も打ち合せを行い、施工会社には随分わがままを聞いて頂いたので住み心地は大変良いです。ただ、もっとこうすれば良かった、いずれここは直したいという発見や思いは尽きません。雰囲気は古い町家そのままですが水廻りやガス、電気系統などは新型の物を装備していただいたので、格好いいだけのやせ我慢にならず快適かつ安心して暮らせています。
 これまでは正月といっても大した飾りなどはしませんでしたが、この家になって初めてしめ縄を飾りました。また鏡餅もプラケースに入ってない昔ながらの本物の鏡餅を飾り、実に清々しい思いでした。現代においてお座なりになりがちな多くの事をちゃんとしたいと思うようになりました。
 またこの家は賃貸と違い自分の所有物ですから、床の色を塗り替えることも出来るし極端な事を言えば壁に穴を空ける事も出来る。つまりこれからいくらでもアレンジ可能なわけなので、内装、インテリアへの興味関心がより高じてきました。有名な建築家の自宅写真など見て感心してます。DIYやるかもしれません。

――近所付き合いは大変ですか。
 一人暮らしを始めてからずっとアパート・マンション暮らしだったので、今の家に越してきて初めて町内会というものに参加しました。その時の議題は、“お地蔵さん”の扱いをどうするかというもので、他府県出身の私としては地域のコミニティに於ける”お地蔵さん”の存在に初めて触れ、新鮮な思いを致しました。その反面今迄無縁だった町内会の存在が若干煩わしくも感じます。
 また境界線というものを意識するようになりました。自転車や植木鉢などを置く場合それを越えないよう気を付けています。

2013.3.1