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京町家情報センター
京町家に移り住んで──燒リ邸


 二条通りからトンネル路地をくぐった先にある4軒長屋の1軒に住みだして1年が過ぎられました。4軒長屋が向かい合った路地奥は、空き家なし、子育て世代も半数近くの賑やかな空間。物理的な距離が近く顔を合わせる機会が多いことで、ご近所の方々ともすんなりと馴染めたそうです。
聞き手:井上信行(エステイト信)

――京町家に住むことになったいきさつをお教えください。
 1年半前、結婚してからの新居を探すにあたり、大学時代慣れ親しんだ左京区でマンションか、京町家か迷いました。絶対に京町家という気持ちではなく、1軒家の親元から出たことのなかった私にとって、マンションも興味津津の居住環境でした。ところが、いざ探し出してみると条件の段階でイメージしているものがなく、住まい探しの大変さを知りました。しかしながら、それと同時並行で京町家情報センターに登録して町家も探し出してみると、不動産屋さんにいったその日に値段と場所と大きさ、雰囲気等、イメージしていたおうちに出会いました。すぐに現地に行ってみると、偶然降っていた雪越しに映る路地奥の姿がなんとも言えず幻想的で即決しました。拍子抜けでしたが、これが縁というやつでしょうか。

――実際に住んでみていかがでしょうか。
 住みだして、よく耳にする基本的な困難にぶち当たることはありました。ねずみが米袋をかじっていた、ブレーカー落ちやすい、階段から落ちる(夫婦で4回!)、冬寒い等等。しかし、暮らすことを楽しめるおうちだと思いました。
 例えば、かど掃き。皆の共有の路地を汚すのは気が引けますし、きれいな路地がきれいに保たれると自分も嬉しいです。他にも、設え。有難いことに我が家には友人や職場関係の方等たくさんの方が来て下さいます。人が来られると飾ってみたくなるもののようで、テーブルクロスを選んだり、季節のお花を飾ったり、玄関に何か置いてみたり、とちょっとしたことを楽しんでおります。
 今年楽町楽家でオープンハウスをした際、斜向かいの方が遊びに来て下さいました。間取りや大きさの違いがあるか、というところで話が盛り上がり、その後その方のおうちも拝見させてもらいました。(間取りは違いました。)こんなやり取りも長屋ならではの経験のように思います。
 ここでの暮らしの魅力は家の中だけではなく、利便性も含めた「まちに住む」というところです。仕事柄「職住共存地域」という言葉はよく耳にしていたのですが、まさに職と住が混在し両立する暮らしをしています。自転車圏内に職場があり、信号を越えない距離に買い物するお店があり、飲食店があり、病院があり、銭湯がある。日常生活と非日常生活が混在しているという点は、まち(都市)ならではの文化です。
 そして日常、非日常と色々なレベルの人と接することが多いのがまちなのでしょうか。その為、小さくてもご近所や来客等、人とコミュニケーションをとる場が道、玄関、奥と設けられていることが、本での勉強ではなく、現実として実感している日々です。これからも、夫婦だけではなく色々なお客さんとの関係も含め、住みこなしていきたいと思います。
2012.11.1