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京町家情報センター
京町家に移り住んで──A邸


――なぜ町家に住もうと思われたのですか。
 私たちは、賃貸マンション暮らしをしていたのですが、子供が誕生したのを期に住み替えを検討することとなりました。実家は兵庫県南部ですが、かねてから、京町家に興味があり、京都で生活しているからには、木のぬくもりと伝統を感じられる京町家で暮らしてみたいとの願望がありました。
 そこで、インターネットで京町家に関する情報を探していたところ、希望にあいそうな京町家を見つけました。早速、不動産屋さんにメールで問い合わせ、内覧の約束をつけました。ところが、内覧の日までに入居者がきまってしまいがっかりしておりました。不動産屋さんに、別の京町家を紹介していただいたのですが、少し予算オーバーでしたので、京町家暮らしをあきらめました。予算内に収まる他のマンションを紹介していただき内覧することになりましたが、どうしても京町家が気になったので、ついでに見るだけということで内覧させていただきました。マンションを何件か内覧をしたのですが、やはり京町家に住むことをあきらめきれず、予算オーバーでしたが町家にすむことにきめました。と、いうのは、この京町家を内覧しているときだけ、息子が泣くことも無く、にっこり笑って、「お父さん、ここがいい」と言ったように聞こえたからです。町家に住むことにより息子の笑顔が毎日見られることが何よりの幸せです。

――住んでみた感想はいかがですか。
 住んでみると、やはり京町家は寒い。すきまが多いのか、風通しが良いのかわからないが初めて迎える冬は寒いです。しかし、フローリングに比べ、畳には暖かみが感じられ、リラックスでき落ち着きます。そしていつも裸足でいられ、足の裏で畳を感じることは、非常に健康に良いのではないでしょうか。寒さは炬燵で凌いでいます。町家に炬燵は良く似合い、うたた寝は気持ちいいです。辛いことといえば、階段がかなり急なので、息子を抱いて昇り降りすることが想像以上にきつい。しかし、しっかり抱くことによって息子への愛情が増して行くような気がします。坪庭にうっすら雪が積もった眺めは、都会の真ん中で、贅沢にも京の四季が感じられ、想像通りの眺めで、雪見酒がおいしかったです。

――ご近所さんとのお付き合いはいかがですか。
 この京町家は5件長屋になっています。引っ越すまでは近所にどんな人が住んでいるのか非常に不安でした。ところが、引越しの挨拶にいくと、不安はすぐになくなりました。
 隣近所の人は、昔ながらの人たちで暖かく私たち家族を迎えてくれました。すぐに親しくなることができ、今では下町の雰囲気を存分に味わっております。マンション暮らしでは、疎遠になりがちな近所付き合いが、長屋の生活にはまだ残っていました。隣近所の人がお互いに助け合って生きていき、お年寄りから子供へ、そして孫へ伝統文化を引き継いでいくことが町家文化ではないでしょうか。町家の暮らしには、人間味が一杯詰まっており、これからも京町家暮らしを楽しんでいこうと思っています。

――ありがとうございました。

2012.3.1