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京町家情報センター
京町家に移り住んで──恩地邸ふたたび

 五条坂を少し上がったところで、7年前に「建設協力金方式」(改修時の分担工事金を家賃の先払いとして支払う)で賃貸が始まった恩地邸が、この方式の期限が来て、今回通常の家賃で再度契約が行われました。そのあたりのいきさつやその間の変化についてお聞きしました。
〈聞き手:松井 薫(情報センター事務局)〉

――7年間の変化
 始めの契約の時には、家主さん側のどなたかが7年後には住むことになるかもしれない、という設定でしたが、いろいろな事情もあり、家主さんも今の家を動けないし、お孫さんもここに住みたいということにはならなかったので、引き続き賃貸で活用する、ということになりました。新しく他の人に入ってもらうよりは、できることなら引き続きで借りて欲しいと言っていただきました。こちらの事情も変化があり、私は昨年3月で退職しましたので、晴れて自由の身となりました。群馬県に山の家があり、これも私たちが面倒を見なければならないのですが、標高1200mぐらいの高さにあり、夏は快適なのですが、冬はなかなか厳しいところです。そこで、昨年は、実験的に夏の半年は群馬の山の家に、冬の半年は京都に、という生活をしてみました。家内が趣味で機織りをやっているもので、その道具も結構かさが高く、群馬の家においてあります。そんなことで、半年山の家で暮らして京都に戻ってみると、空き家になっている間にネズミがいろいろ悪さをしており、あけておくのも問題だなと思いました。

――季節シェアの提案
 そこで、再契約の話の時に、空いている夏の間、どなたか留守番じゃないけれど、借りてもらえる人がいないですか、と仲介の若山不動産さんに聞いてみました。すると、その条件でもいいというぴったりの人を紹介してもらいまして、今年の夏、試しに実施してみました。2階には荷物が置いてあるので、1階を時々使ってもらうという形でしたが、留守番役の人が、とても気に入ってしまって、来年もまた同じように使いたい、との話がありました。今年の夏は非常に暑いのが長く続いたのもあり、それでは来年はいくらなんでもエアコンぐらい入れましょう(それなりの納め方で)という話になってます。普通、留守の間に他の人が住むことについては、なかなかふん切れないものですが、若山さんが紹介してくれた方が、とても相性がよくて、何回かお会いして話しているうちに、やってみるのもおもしろそう、という気持ちになりました。やってみて、気の会う人と季節を分けて、町家を楽しむというのも、いいかもしれないな、と思ってます。ひょっとすると、次はその留守番役の人が借り主になって住むことになるかもしれません。今回、間に入った若山さんの役割はとても大きいと思います。


恩地邸
――渡り鳥初級
 季節に合わせて、ねぐらをかえるのは、渡り鳥が普通に行っていることですし、我々も当分は渡り鳥のように、季節ごとに群馬と京都を行ったりきたりする生活をしようと考えています。留守にする間、別の人に家を任せて住んでもらっていると、その人が気に入って楽しむようになれば身の回りのこまごましたことを、自分流に少しアレンジしたりするもんですが、そういうことも、お互いに認め合うことが必要になってきます。また、ひとつの家に2つの別の家族なり人が、時期をずらすにせよ住むことになれば、家の中に住むための荷物がどうしても多くなりがちになります。今後の課題ですが、渡り鳥としては、もっと物を少なくして、軽やかに暮らしたい、町家を楽しむためにはそのあたりまで行きたい、と思ってます。まだまだ渡り鳥としては初級です。(恩地氏談)
2011.1.1