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京町家情報センター
京町家に移り住んで──H邸

  御所の南、寺町通から一筋入った静かなたたずまい。神社の壁を目の当たりにしたHさんのお住まいは、仕舞屋造りの町家。玄関の小さな出格子が特徴的なお家です。ご主人と奥様そしてお子様3人とでお住まいのHさんにお話をうかがいました。 
大前温彦(オークライフ株式会社)

――町家にお住まいになられるきっかけを教えてください。
 以前は近くのマンションに住んでいたのですが、町家を探していた訳ではありません。子どもたちを転校させたくなかったので、同じ学区内でマンションのように音のことを気にしなくてよい物件を探していました。たまたま、こちらのお家が私たちの条件にピッタリ合ったからです。
H邸
H邸
――実際にお住まいになられてマンションとの違いはいかがですか?
 マンションは暖かでしたが、6階でしたので外を歩いている人の声も聞こえませんでした。雨が降っていることも下へ降りるまで気づかないということもありました。外から遮断されている感じでしたが、ここの町家はお手洗いが外にあることもあり、毎朝、お天気を肌で感じることができます。寒い冬に毎朝冷気を浴びることで、マンション生活のときより子どもたちも風邪をひきにくくなりました。
 建物は、至る所に昔の人の知恵が感じられ、感心しています。入ってすぐに客間があると、表で立ち話もなんですが奥へあがっていただくほどではというときに大変便利なスペースです。
 また、すべての仕切りが取り外せて、昔の家は大勢の人が集まる機会があってそのように作られたのでしょうが、今はいろいろな空間を楽しめて面白く感じます。
――お子様たちの反応はどうですか?
 広くなってお友達を連れてくるようになりました。走り回っても大丈夫ですし、かくれんぼもできて楽しそうです。マンション生活のときは下の住人に気を遣い、子どもたちも窮屈でしたが、今は健康でのびのびと元気になってくれたことが一番うれしいです。
 今後も工夫次第で、違った空間を楽しめそうなので、子どもたちもさらに喜んでくれると思います。
――ご近所との付き合いはいかがですか?
 マンションでは同じフロアでも生活時間が違うと全く顔もあわせることなく、声も聞こえず個別で少し寂しい感じでしたが、こちらは通りに面していることもあり人の声がよく聞こえますし、近所の人の声も聞こえるので身近に感じられます。この前も、前にお住まいだった方がお店をしておられたらしく、「お店、閉めたの?」とお客さんが飛び込んでこられました。(笑)
 ご近所は、親子何代も古くからお住まいになっている方がおられますが、わからないことや知らないことをいろいろ親切に教えてくださるので安心して生活しています。
――町家の生活で困ったことはありますか?
 先日、暖かな日に羽アリが出ました。初めてで驚きましたがご近所の方が情報を教えてくださったので2回目には冷静に対処できました。その後、大家さんが対応してくださいましたが、やっぱり大なり小なりあることなのですね。その他もいろいろな生き物が入り込んできます。台所にダンゴムシが歩いていた時は、子どもたちは喜んでいましたが。(笑)
――奥様は音楽をしておられるとか?
 はい、私はチェロを弾くお仕事をしています。生徒さんにも教えていますので、入ってすぐの客間はレッスン室に利用できて本当にありがたいです。音楽をするものにとって、音が出せるかどうか……という点は常に気にしなければなりません。アンサンブルをしたりすることもあるので、いろいろな楽器の音を出したりしますが、騒音にならないかと気にしなくてよいことはとても助かります。
 音楽仲間にも「素敵なお家」と良い評判です。チェロを弾いていると木でできたお家は家ごと共鳴するということを聞きました。実際、ホールで弾く音とは違った深みを感じます。楽器と家が一体となり家全体で音を出しているというのは言い過ぎですか?ご近所に迷惑になってないでしょうか。(笑)
2010.7.1