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京町家情報センター
京町家に移り住んで──日下部邸

   フェアトレードのコーヒー豆の販売の仕事で、岡崎の京都生ショコラに立ち寄ったのがきっかけで、きれいに改修された町家に住むことになって丸1年になろうとしている日下部さんに話を聞きました。
松井薫(京町家情報センター事務局長)
日下部邸
日下部邸

―町家に住むことになるまでのいきさつをお聞かせください。
 生まれ育ちは京都の亀岡で、祖父が大工だったので、築70年ぐらいの住みながら建て増し建て増しした家で、学生時代まで過ごしました。薪の風呂でトイレは外にあり、夏はもちろんエアコンはなしで扇風機で生活してました。
 もともとコーヒーが好きだったのですが、前の仕事の時に知り合った人から、ウインドファームというフェアトレードのコーヒー豆を販売している会社があることを教えてもらい、スロービジネススクールやウインドファームとのかかわりができました。仕事もそちらに変わって、京都で町家に住みたいと思っていたとき、コーヒー豆販売の仕事の関係で行った岡崎の生ショコラで、偶然京町家友の会の山田さんに会い、情報センターを教えてもらいました。情報センターで話をしていると、松井さんがすでにウインドファームもスロービジネスのこともご存知で、ちょっとびっくりしました。さらに、ちょうどそのときに、改修できたばかりの貸し町家があって、すぐに決めて住み始めたのです。今から思うと、偶然の積み重ねで町家にたどり着いたようですが、こうして町家で職住一体で生活している今の状態まで、もともと道筋がついていたような気がします。私はそれにはずれないように、なぞっていっただけといった雰囲気です。

茶箪笥
茶箪笥

―実際住んでみていかがですか。
 ちょうど丸1年になりますが、引っ越したときが冬だったので、町家はもっと寒いのかと思ってましたが、ここはすきま風も入ってこなくて快適です。昔住んでいた家のほうが寒かった気がします。春は周りの景色もきれいで、楽しいし、夏も窓をあけて風を通すと結構快適に過ごせました。ここは屋根の上に大きめのベランダがあり、そこにプランターを置いてトマトなどを作る屋上菜園にしています。物干し場でもあるのですが、大根の皮を干したりもしています。自分の暮らしのリズムを大事にしたいと思い、職住一体の町家生活を目指したのですが、実際にやってみると想像以上に楽しいものです。町家に住むことと、フェアトレードやスロービジネスとは、共通するところがあって、そのおかげでいろいろな人とのつながりもできました。他の町家でフェアトレードの話をさせてもらったり、その時に来ていた人と知り合いになったりして、この1年で思いもかけないほど、多くの人と知り合いになりました。

―ご近所との付き合いはいかがですか。
 この近所はやはりお年寄りが多いのですが、とても親切にしてくれています。引っ越してきた初めに挨拶に行った時に、「若い人がきてくれてうれしい」と言ってもらいましたし、地蔵盆などに顔を出すとすぐ仲間に入れてもらって、今年からは何か役をすることになると思います。屋上のベランダ越しに隣や向かいの人と世間話をしたりもしますが、ベランダ越しだと、なぜか距離も近く感じられて親しく話をさせてもらってます。

―これはおじいさんの作ですよ、と教えてもらったのが、小さな文机と茶箪笥。おじいさんの作った家で育ち、町家に住んでも、おじいさんの手の跡の残るものを身近において生活しているのを見ると、町家くらしの生活文化が、おじいさんから確実に孫である日下部さんに、つながっているのを感じました。

2010.3.1