大徳寺の近くは、門前町として古くから人々が住んでいた場所です。そのあたりの商店街も当然古くからあり、もともとは町家が連なっていたわけですが、その一角に移り住んでカフェを始められたSさんに、お住まいになっての感想をお聞きしました。 川端寛之(京町家情報センター:潟tラットエージェンシー)
――なぜ、京町家に住もうと思われましたか? ――実際お住まいになって気付かれたことは?
現在のところに住みだして約2年がたちましたが、季節がふた回りしましたので、このあたりの季節ごとの感じは大体わかってきました。この町家は、庭だった部分まで部屋として取り込まれていて、いわば庭がないという状態なので、風通しがあまり良くないだろうと思っていたのですが、不思議なことに夏は大変涼しく過ごせています。私たちが住む前は、お茶の先生が住んでおられたとの事で、いたるところに細やかな配慮・工夫が施されていて京都人の知恵が伺えます。たとえば床柱には一輪挿しができるように小さな金具が埋め込まれていたり、床下収納も大きく作っていたり、大切に使われていたことが伝わってくるようで、大変味わい深く感心しています。日本家屋の独特の“力”でしょうか。生活している中で、落ち着く、和むという感覚を実感します。ただ、マンションと違い、掃除や管理に多少手間がかかりますね。 ――ご近所や家主さんとのお付き合いはいかがですか。 最近では商店街も活気がなくなっているところが多くなっていると聞きますが、この商店街は、観光客でにぎわうというような感じではないのですが、落ち着いたいい雰囲気のある商店街で、ご近所の人たちもとても親切でいろいろな話も聞かせてもらえますし、いろいろと助けていただいております。家主さんはとても誠実な方で、いつも心を砕いていただき、感謝しております。特に入居する際に雨漏りの心配があるところがあったのですが、家主さんがしっかりと屋根を葺きなおして下さったり、シロアリ駆除もしていただいたりと、大変ありがたく感じています。 ――外観ではわかりませんが、内部には特徴的な丸窓があり、床の間がありました。それをそのまま生かして落ち着いたカフェになっており、生活も含めてこの地域によくなじんでいます。これもSさんの、以前からあるものを大切にしていこうという思いの表れだろうと感じました。 2010.1.1
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