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京町家情報センター
京町家に移り住んで──星崎邸

昨年の楽町楽家での「住みたい町家を探しにいこう」で、念願の町家に出会い、楽町楽家期間中に「中古建具市」で夏の簾戸も求めて早速に住みだした星崎さんに、今年の楽町楽家を前に、住んでみての感想をお聞きしました。

松井 薫(情報センター事務局長)
 
――また楽町楽家の季節が巡ってきましたが、この町家と出会うまでのいきさつは?
 おととしの楽町楽家の「流通途上町家めぐり」も参加して、いろいろ見て廻ったのですが、その時は、町家に暮らすはやっぱり改修が必要なんだ、とわかってためらってしまいました。昨年の4月ごろからまた無性に町家に住みたくなって、不動産屋さんにもいくつかいったりしましたが、わかってもらえず、昭和30年代の家を案内してもらって、「もっと古い家ないですか」というと「ボロをお探しなんですね」といわれる始末でした。それだけに前回の「住みたい町家を探しにいこう」は期待が大きく、朝一番に廻りました。この町家は見た途端、これだ!と思い、絶対にこれに住みたいと思いました。だから実際に住めるようになって、すごくうれしかったです。

――そもそも町家に住みたいと思ったのはなぜですか。
 小さい頃、松江に住んでいて、遊びに行くといったら家の外すべてが遊び場でした。川も道も野原も。それから東京に引っ越したのですが、そこでは、遊ぶなら公園で遊びなさい、といわれました。きれいに整備された公園は、いままで遊んでいた自然とは違ったもので、ちょっといやでした。大きくなるにつれてマンション暮らしが性に合わない、という思いが強くなり、通学に使っていた電車の中で荷物のように毎日運ばれながら、ときどき疲れたうめき声を上げるおとうさんがたを見たりしていると、ここは人間の住むところではない!と思うようになりました。住むなら、もっと自然と近い環境で住みたい。せめて庭のある1階に住みたい。今は、時代劇制作に関わる仕事をしていることもあり、扇風機も暖房機もない暮らし──ストーブ、エアコンもずっと使っていたので──家と共に暑さ寒さをしのぐ工夫をもう少し知ってもいいんじゃないかと、町家を探し始めました。

岡田邸
星崎邸
――実際住んでみて、いかがですか。
 やはり冬はストーブの電源を入れてしまいますが、春、夏、秋は快適です。1階床が全部フローリングになっていたのですが、やっぱり畳がいいので、薄い敷物ですが畳を敷いています。格子越しに外を見ていると、通行人がシルエットで見えてとてもおもしろいです。大人が通り、子どもが通る。時にはお坊さんが何人も何人も通っていきます。今年は、奥の庭をもう少し植物を植えて、網戸も作って風通しをよくすれば、もっと気持ちよく生活できそうです。

――縁側のところに蓑がかけてありましたが……。
 仕事で蓑が必要になったのですが、現在関西で蓑を作ってくれる人がほとんどいなくて、やっと見つけて作ってもらいました。草鞋はお祭りや、舞台でも需要があるので、作る人も技術も残っていますが、蓑となると需要がなくて技術を持った人がいなくなってきていると知りました。今回作ってもらった人も30年ぶりに作ったといっていました。でもこういった自然素材を手仕事で加工して生かしていくということは、とても大切なことだし、初めは自分で作るつもりはなかったのですが、知った以上なくならないよう、出来ることはしよう、ずっと日本人はこうした生活をしてきたのだからと思い、先日も四国の山奥の小さな集落で技術を持っている人がいるというので、会いに行って作り方を教えてもらいました。

――「これ、私が作ったのですよ」と見せてくれたのは、藁で作った雪靴のミニチュアでした。「まだまだですけどね」といいながら、とても楽しそうに話してくれました。

2008.5.1