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京町家情報センター
京町家に移り住んで──岡田邸

西七条のあたりは、大正〜昭和初期ごろに建てられた住居専用の木造住宅がまだ多く残っている場所ですが、今回の岡田さんのお宅もそのような建物で、6年前に一部を改装して住みだした岡田さんを訪ねてお話を伺いました。

松井 薫(情報センター事務局長)

──ご出身はどちらですか。
 生まれは東京です。昭和4年に建った、玄関と応接と廊下と階段が洋風の木造住宅で育ちました。始めにこのあたりに来たときは、都会の中なのにネクタイ締めてぴっと歩いている人がいなくて、皆が下を向いてそっと歩いている印象を受けました。京都は気候が厳しいのに、特に夏の暑さの中で、すだれをかけてガマン、涼しい気分になってガマンと、負け惜しみで粋がっている気がしていました。それがこのごろ、どうもそうではないな、と思うようになってきました。そっとあるいているように思うのは、無駄なエネルギーを使わずに省エネ歩行なのだな、と。そのほうが自然なのかもしれない。

岡田邸
岡田邸

──建物を改装されるときにお考えになったことは?
 この建物は大正3年上棟で、普通の町家とは違って、中廊下でした。内部の印象として暗く、使い勝手も風通しもあまりよくありませんでした。もともと仕事が、企業の中でのインテリアデザインの仕事でしたので、仕事を通じて、'60年代後半からの住宅の規格化、効率化の流れや、'80年代初めごろでしょうか、パッシブシステムの考え方が出てきたのですが、それは本流にならず、国全体が高気密・高断熱に向かった流れを知っていましたので、その中で町家の特質、構造や空間のシステムのおもしろさをどう生かすかを考えました。具体的には、明るくして風通しをよくしながらプライバシーを確保するということでしょうか。住んでみると、もっと風通しを良くしたいと思うようになりました。
 工事を通じてわかったことですが、オーナー側が、建物について材料や使われ方などを知っていないと、職人さんと話ができず、結果として自分の思っていたようなところに近づけないということです。もともと町家に住んでいた人は、そういった知識を持っていて、メンテナンスにきてくれる職人さんとちゃんと話をしていたのだと思います。

──この家にお住まいになっての感想は?
 マンション住まいと違って、エアコンを使わないで生活しています。光熱費や省エネルギーを考えれば、それで過ごせるくらいには造られていますね。プランとしては改装ということで、構造上の制約もあり、新築のようにプランを自由に考えることができませんので、どうしても、うまく使いこなせていない、と感じるところが残ります。それから庭に結構手がかかるのも住んでみてわかりました。でも庭を見ていると、蝶の通り道があるのがわかりますし、小鳥もやってきます。建具では、夏になると簾戸を一部入れるのですが、現代の明るい照明では、中が丸見えになってしまいます。これも最小限の灯かりで過ごしていた状態ではそういう不都合はなかったはずです。そんな風に町家は一筋縄ではいきませんが、生活がナチュラルになるところがいいですね。

──最近、町家のよさを語り伝える会の事務局をされているとか。
 はじめはこの町家に手を加えることにした時に、どのように考えたらよいのか少し勉強をしようと、この会に参加したのが8年前。そして他にも町家を何とか残したい、或いは町家のことをいろいろ知りたいという方が多くいらっしゃることが分かり、少しでも役に立てばとボランティアでしています。住まいだけでなく、係わりのある職人さんを始めとして町家を通していろいろな方々と知り合い交歓できることは、ためになるし楽しいですね。

2007.7.1