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京町家情報センター
京町家に移り住んで──和楽庵

 熊野神社の近くの、元下宿用の建物だったものを借りて、自分たちで直してゲストハウスをオープンした「和楽庵」さんを尋ねて、いきさつや町家に住んでみての感想などをお聞きしました。

松井 薫(情報センター事務局長)


――京都でゲストハウスをしようと思ったのはどういういきさつですか。
 大学時代に京都に来て、卒業してから東京で4年間バリバリに働いたのですが、どうも何かが違う気がして、それと疲れてしまって1年間フランスを中心に放浪してました。その時外国人と話していたら、日本には興味があって行きたいのだけれど、宿泊とかが高くて行けないというような話をよく聞き、外国の人たちが来ても安くて宿泊ができるゲストハウスをしようと思いました。この場所は、たまたまシェアして住んでいた相方が、ここの大家さんがゲストハウスをする人を探している、という話を持ってきてくれて、借りることができました。

――自分たちで改修されたのですよね。大変でなかったですか。
 おもしろかった! すぐに鼻水は茶色になるし、毎日どろどろになるけれど、案外、自分たちでもできるんだ、ということがわかり、やったあとの達成感がすごくありますね。始めどこから手をつけていいかわからなかったのですが、町家の構造をよく知っている大工さんにいろいろ教えてもらいながらやると、結構家の仕組みとかもわかって、昔の人たちも自分の家をこうして手を入れながら住んでいたんだろうなあ、ということが実感できました。おもしろかったのは、建材店などの対応で、べんがらなどを買いにいくときでも普通の女の子の格好でいくと、当然ながらシロウト扱いされますが、腰に釘袋さげて「まいど!」なんていう感じで行くと、プロ扱いしてくれ、その変化の大きいのがおもしろかったです。

和楽庵
和楽庵

――実際住んでみてどうですか。
 中庭があるのがいいですね。東京時代との対比で考えると、時間の流れが遅くなりました。時間がゆったりと流れている感じがします。夏はウワサには聞いていたけれど、1階の涼しさにびっくりしました。汗かいて外から帰ってきて、家の中に入るとひんやりして、じっとしていると汗が引いてきます。冬はさすがに寒いですね。でも完璧でないのがいい。ゲストハウスのお客さんからも、暑い、寒いの苦情はきておりません。皆さん、暑いのも寒いのも楽しんでおられるみたいです。いろいろな人が出入りするゲストハウスだからよけいに思うのかもしれませんが、回りは火がついたら燃えやすいものばかりなので、かえって火にはくれぐれも気をつけようと意識しています。家も完璧でない分、いつも気をつけながら、こまごまと手入れをしたりしています。でもこの方がまとも、というか普通の気がします。免許とりたてで事故は起こしませんよね。それと一緒で意識していることが危険なことから身を守っているのだと感じています。普段の意識がそういうふうに変わってくると、食べ物のこととかも意識しだして、現代のおかしさに敏感になってきました。これも町家に住んだおかげですよね。

――ゲストハウスのお客さんはびっくりするぐらい多いですよ、と臨月のおなかでインタビューに答えてくれました。生まれてくる赤ちゃんにもいい環境ですね。

2007.3.1