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京町家情報センター
京町家に移り住んで──勝井・ルオン邸

 以前から、京都に住むなら断然町家がいい、と探されていた勝井さんが、情報センターに尋ねてこられて、ほどなくしてご縁があり、今お住まいの町家を購入されました。町家に住んで間もないのですが、生活ぶりの変化をお聞きしました。

〈松井 薫(情報センター事務局長)〉

―確か北海道のご出身だとお聞きしましたが……
 はい、18歳までは北海道におりました。それから東京に住んだのですが、なじめませんでした。そこに一生住もうとは思わなかったです。そのころから京都は憧れの地で、住むのなら町家に住みたいけれど、1軒の家を購入するなんてとてもできないので、4年前京都にやっと来ることができましたが、マンションで暮らしていました。
 京都の生活が落ち着いてきたころ、東京では都心に一戸建ての家を買うなんて考えられなかったのですが、京都の町家なら自分たちでも何とか買えそうだということに気がついて、情報センターを訪ねたというわけです。
 北海道で生まれ育っていますので、京都の冬も、外を歩くのは全く問題なく平気ですが、特に町家に住んでみてから感じたのですが、家の中が寒いのに驚きました。北海道では冬、外は本当に寒いですが、家の中は暖かでしたから。

勝井・ルオン邸
ファサード
 

―マンションから町家に移られて生活は変わりましたか。
 町家に住んで4ヶ月目なのですが、それまでに比べると、家でよく食事をするようになりました。家に帰るとほっとして、リラックスできるのです。マンション住まいのときは、この時期にはクーラーを入れないと過ごせませんでしたけれど、ここに住んでからは、特に1階は風が気持ちよく通るので、クーラーは必要ありません。たたみの部屋は広くて気持ちがいいし、床の間もあり、小さいながらも庭もありますので、ゆったりした気持ちになれます。この家は玄関にも奥の座敷にも床の間があるのですが、最近はよく花を飾るようになりました。しつらえも自分なりに季節によって変えてみたいと思っています。家の中に楽しみがあると感じています。仕事が終わって、帰りたい家、になりました。

―町家の空間でお感じになっていることはありますか。
 玄関の小さな出窓の格子越しの光がとても美しいと感じています。この光景をじっと見ていると、時間の流れもゆったりしています。町家というのは、単に生活の場としての家を作ろうというのでなく、美しいものを作ろう、という気持ちで出来ているように思えてきます。だってあの障子の桟の細さなんて、紙を貼りとめるという機能のためではなく、ひたすら美しくあろう、と作られていますよね。ひとつひとつにそういう作る人の気持ちが込められている空間だと感じています。
 日本の伝統の家は、気軽に多くの人を呼んでパーティとかはしないし、プライベートな生活空間には他人は入れないもののようですが、ウチでは、頻繁にパーティをします。日本にいる外国人が来ることも多いのですが、みなさん、この空間を喜んでくれますし、くつろいでくれます。大勢の人が来ても、部屋の間の障子やふすまをあけるだけで余裕のある空間ができるのも町家の魅力ですね。

―日本人の奥さんとカナダ人のご主人が、伝統的な住まいを上手に使いながら、現代の都会生活を楽しまれている様子は、まさに町家がこれから未来にむかっての大切な建物であることを物語っているようでした。

2006.9.1