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京町家情報センター
京町家に移り住んで──瀬島邸

 今までマンション住まいしか経験のない瀬島さん(奥さん)が町家に移り住んで3ヶ月。寒い冬も経験された今の感想を、いつものインタビュアーとその後輩と共にお聞きしました。
〈松井 薫(情報センター事務局長)〉

――初めての町家で向かえた冬はいかがだったですか。
 瀬島さん:いやー、本当に寒かったです。冬の間は気を引き締めていたのですが、少し暖かくなって、気を緩めたとたん、風邪をひいてしまいました。この家は織屋建てと呼ばれる形で、奥に土間があるのですが、初めに見たときはここに部屋があり、それをなくしてもとの形に復元して、犬と一緒に靴を履いたままで過ごせるようにしたいと思って改修しました。土間で過ごすことが多いので、余計に寒さがこたえました。

奥様:住み始めたのが冬だったので、あまりの寒さに引きこもりがちになってしまいました。中にこもっていると、この天窓がさあーと白くなってくるのです。雪が降り始めるとすぐわかります。それがとってもきれいで。最近は奥のきれいに刈り取られていた庭に、雑草のような草が芽吹き始めて、春なんだなあとうれしくなります。


――実際に住んでみて、どのようにお感じになりましたか。
  瀬島さん:ここに住むようになってから、鍵を開けて寝ていても大丈夫というような人に対する安心感を抱いているところがあります。それは、町家では表のミセの間は道路からも見られている感じがありますが、建物の道路面にスキがないからだと思っております。マンションにいたときは、ちゃんと戸締りをしないと危険な気がしたのと比べると、普通考えられているのとは全く逆で、周りの音や空気が筒抜けになっている町家のほうが安心感があります。またこの家でなら家の中でも土間を犬が走り抜けることができます。そういう姿を見るのはとても嬉しいですね。

――お話を伺っていると、ここでの暮らしをとても楽しまれているようですね。
 瀬島さん: そうですね。例えば、木のテーブルや椅子、蛍光灯ではなく電球の色のあかりなど、この家にはどんなものが合うかとしつらえを考えることもとても楽しく、マンションではできなかったことだなと思います。食事をするときに炭を使うようにもなりましたが、それに使う七輪を選びに荒物屋さんへ行ったのですが、いろいろな生活の道具が置いてあって、荒物屋さんがこんなにおもしろいとは思いませんでした。京都に引っ越すことになり、町家に住みたいと京都の人に話したときには、そんなことはやめておけと言われましたが、住んでみると、家を作っている素材のよさや、日常使っているものの素材のよさを感じますし、昔の人が選んだそういった素材のよさをわかって受け継いでいく人がこれからも増えて欲しいと思っています。

奥様: 最近は、少しずつこの家も私たちを受け入れはじめてくれ、仲良くなれてきたかなと思っているところです。町家のような古い家は、歴史がある分人格ならぬ家格といえるような個性があって、そして人を受け入れる力も持っていると感じます。マンションに住んでいたころは、虫とかに少し神経質になっていたのですが、この家に住んでからは虫なんかは、いても当然だし、天井裏をねずみが走っても気になりません。それらのほうが私たちより先にここに住んでいるのですものね。

瀬島さん:家の吹き抜けの隅あたりには、明らかに「もののけ」がいると感じていますが、(愛犬もあらぬ方向をじっと見たりしている)それらも含めて、共に生活している、っていう感じがして、蜘蛛が出てきたり、ねずみか猫かわからないのですが大きな音を立てて屋根裏を走っていったりしますが、それをやっつけようとは思いませんね。

奥様: そうそう、マンションのときはやたらと「やっつけなきゃ」と思ってましたが、町家には「やっつけるもの」がないのかもしれません。違和感なく共存しているっていう感じです。

――見事に3ヶ月で町家の住人になっておられました!

2006.5.1