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京町家情報センター
■京町家に移り住んで…丸山邸

 今回の京町家は、上七軒の近くにある小型のものですが、持ち主がそれまでお住まいになっていたお母さんを自分の所に引き取り、空家になったので駐車場にしたいと情報センターに相談を持ってこられたものです。早速見に行ってみると、確かに少し傾いており、雨漏りもしていて手入れが必要に思えました。しかしこの建物を壊してしまっては、町並は乱れるし、第一ついこの前までお住まいになっていたので、住めないわけがない、必ず住みたいという人がいますので貸し家にだしてください、とお願いして賃貸にしてもらいました。そこに移り住んだのが今回の丸山さんです。今回も学生たちがインタビューしました。
〈松井 薫(情報センター事務局長)〉

――なぜ町家に住もうと思われたのですか
 もともとギターを作る仕事をしているので、家で作業できるスペースが欲しかったんです。町家には元来、作業スペースというか、仕事をしながらそこで生活をするという空間があるので、町家なら自分の生活にピッタリだなあと思っていました。現在は事情があって、別の場所でウクレレを作っているのですが、近い将来ここで作れるようにしたいと思っています。

――どうやってこの町家を見つけられたのですか
 最初は、自分で色々な所をまわって空いている町家を探していました。空いている町家があったら、「この町家を貸してください」という内容の自分で書いた手紙をポストに入れて返事を待っていたのですが、なかなか返事がなく、借りることができませんでした。その頃、友人からこの京町家情報センターのことを聞いて早速ユーザー登録をしました。少し待っていましたが、いいタイミングでこの町家の情報を送ってもらい、すぐに見に行って、自分の条件にぴったりだったので、借りることにしました。

――実際に住んでみて、よいところは?
 この町家は作業スペースもあるし、自分の条件にとても合っています。近所の方も、来た時から何かと声をかけてくれて親切にしてくれますし、住む環境としても生活面で不便を感じることもありませんしとてもいいです。元々作業をすることを前提にしてましたので、多少音が出ても近所から苦情が出ないところを探していましたが、このあたりは近所でも機織をされており、こちらの出す騒音に敏感にならなくてもすみます。風呂がないのですが、近くに銭湯もあり、ちょっとしたシャワーのようなのは自分でつけたので、全く問題ありません。家が少し斜めになってしまっているのですが、自分では普段の生活では気になりませんし、むしろそこが面白い所だと思っています。

――家が斜めになっているというように、家が古いことは気になりませんか
 以前に雨漏りがしていたところがあったのですが、それも自分でコーキングをして直しました。自分でも家を直したりすることに関われるのが、とても楽しくて、「自分の家」という気になります。奥の部屋も以前はベニヤ板で天井があったのですが、それを取り払うと、屋根の天窓からの光が直接部屋に入ってきて、とても明るくなり、感激しました。天窓の効果は予想以上で、すばらしいです。家が少々斜めになっていても、壁の角が少しとれていたりしていても、特に気になりません。この家は5年の契約で5年たてば返すことになっているのですが、この家の良さをもっと引き出して、持ち主の方にも伝えて、ずっと住みつづけられるようにアピールしたいです。

――この町家で改善したいところは
 2階の道路側の部屋を少し手を入れて部屋らしくしたいです。それと奥の部屋の天井を取り外したので、冬はきっと寒いと思うので、防寒対策をしないといけないですね。庭も今のところ、屋外のリビングのような使い方をしていますが、いろいろ使い道があると思うので考えてみたいです。

――今まで住んでいた家と比べてどうですか
 以前はアパートのようなところに住んでいて、昼間から照明をつけないといけなかったのですが、この町家は天窓からの光が、あかりの代わりになって、昼間、照明をつける必要がありません。天窓からのあかりは、天候によって明るさが随分ちがいますが、かえって自然を感じられて気持ちがいいものです。風通しもよく、今の時期はとても快適です。この町家の空間が自分にはよく合っていますし、居心地がいいです。
 これから先、マンションに住めと言われても、町家の空間が気に入ってしまったので、絶対マンションには戻れないですね。

――ありがとうございました。